ホラーゲーム批評:Agony
リリース前に独特のビジュアルで話題を呼んだ地獄ゲーAgonyのレビュー。
今回はブロマガ版とほぼ文章変わりません。
タイトル:Agony
発売元 :Madmind Studio
開発元 :Madmind Studio
発売日 :2018年5月30日
ハード :PC(Steam)
価格 :3,090円(税込)
地獄シミュレーター2018
ストーリー
地獄に堕とされ、記憶を失った主人公。
ただ一つ残された記憶「赤い女神」がこの地獄から逃れるための鍵を握っている筈と考え、恐ろしい悪魔達から身を隠しながら彼女を探し求める。
魂だけになって他人へと乗り移る能力を駆使しつつ、彷徨を続けた先に待ち受ける運命とは・・・・・・。
さて、今回のゲーム『Agony』は地獄を探索するホラーゲーム。
タイプとしては一人称視点のアドベンチャーゲームで、操作もよくあるFPS系でシンプル。
システム的に特徴なのは、プレイヤーが死んだり殺されたりした時に魂が抜けだして近くに居る人間や悪魔に乗り移ることが出来るということ。
近くに乗り移れる人間がいる限りはゲームオーバーにはならない。
つまり、そこらへんにいる人間は残機扱いになるってわけね。
ただし、袋を頭に被っている人間には乗り移ることが出来ないため、袋を被っている人間は片っ端から袋を剥ぎ取っていこう。
頭に頭陀袋を被っている人間には憑依できない
見つけ次第引っ剥がして残機にしよう
性別が男でも女でも関係なく乗り移れる
レリクスっぽさある
簡単にはゲームオーバーにならないとはいえ、相手は悪魔。
基本的に見つかると命は無いので、主に敵から隠れながら進んでいくことになる。
プレイヤーを襲ってくる悪魔達のうちの一種類、オノケリス。
丸出しで迫ってくるぞ!捕まると一撃死。
もし死んで魂だけになった時に、一定時間内に乗り移る対象を見つけられないか、辺りに浮遊するタコの足みたいな化け物に捕まってしまうとゲームオーバー。
チェックポイントに戻されてしまう。
Agonyで特筆すべきはそのビジュアル。
地獄を鮮烈に描き出したグラフィックは、インパクト絶大。
スクリーンショットはこの手の物が好きな人なら非常に魅力的に映るだろう。
エログロ表現が過激なのも特徴。
象徴的なのが登場キャラのサキュバスで、常におっぱい丸出しでブルンブルンしよる。
これがそのサキュバス。
ずっと裸。目のやり場に困る。
こんなナリで、そこらへんにいる人間の内臓を口から抜き取ったりする。
他にも地獄に登場する人々は色んなところがモロ出し。
でも顔や体の造形がイマイチで全然エロくはない。
グロ方面は串刺しの死体とかバラバラ死体とか、そんぐらいは普通にそこらへんに大量に転がってる。まあホラーゲームには良くあることですね。
局部とか断面とか、色々と映っちゃいけない物が目白押しなため、Youtubeとかでゲームプレイ配信することは不可能だと思われる。BANされるぞ!動画配信サイトでやりたいと思ってる方は注意しましょう。
ちなみにこれでもゲーム販売のために過激な表現を削った状態だそうだ。
削除されたシーンは動画で公開されているが、レイプシーンや幼児(のような人間)の首をもいで殺害していくシーンやらがあったようで、そりゃそんなシーン規制されるわな・・・・・・って感じ。
Agonyには収集要素も用意されており、「像」などのアイテムを集めるごとに貯まる「知識」というポイントを消費することで3Dモデルや設定画、文書等をアンロックしていくことも可能。
アンロックされるものの中には漫画もあり、繰り返しプレイすることでAgonyの恐ろしい世界をより堪能することが出来るだろう。
そんな気になればだが。
収集要素は豊富。
3Dモデルや設定画などがある。
かなりの周回を重ねないとコンプできないと思われる。
漫画は日本語訳がイマイチ。
プレイヤーに地獄を見せてやるぜ!
さて説明したように、Agonyは地獄を題材に取ったゲームではあるが、そのプレイ感もまさに地獄そのもの。
延々と苦しみが続く恐ろしいゲームに仕上がっている。
まず、非常に劣悪な操作感。
実際に遊んでみないとわかり辛いんだが、歩いてると地面のちょっとしたでっぱりに引っかかりまくってストレス溜まる事この上ない。
落ちてる小石やら、そこらへんから飛び出した良くわからん骨の装飾とかにめっちゃめちゃ引っかかる!
行きたいとこに素直に行けないのはザラで、イライラ溜まりまくり。
コリジョンの設定が全体的におかしい。
さらに歩くときの視点の上下動が激しく、地形に引っかかる事の視点のブレも相まって、FPSでは屈指の酔いやすさを誇る。
舞台が地獄で画面が終始暗いこともあり、デフォルトの視野角が狭い事もあわさって、非VR系のタイトルの中では三半規管への攻撃力が高い。
ステルス要素がはっきり言って邪魔。
このゲームは悪魔に見つかった時は走って逃げて隠れないといけないんだが、走る時の初動で地形に引っかかると走れなくなる。
それで理不尽に殺されることがよくあり、基本即死ゲーなのもあってイライラ。
悪魔の巡回ルートや探知範囲が非常にわかり辛いのもつらい。
どうもこのゲームの敵の移動ルートはランダム要素が含まれるようで、行きたい場所付近を延々うろうろしていたり、何もない所で急に振り向いたりする。
当然見つかったらだいたい死ぬ。
ステルス要素の調整が不十分で、ストレスの根源にしかなってない。
結局ステルスを捨てて突っ込んでさっさと死に、強引に魂状態で突破したほうが楽。
殺されて魂だけになった時の操作性も重い上に慣性がキツい。しかも乗り移るまでに結構長い演出が入り鬱陶しい。
良く死ぬゲームだけにこの一回一回の演出の長さが積もり積もって馬鹿にならない。
憑依する度に長い演出が入る
下手すると憑依した瞬間にリスキルされて連続で死んだりもするのでウンザリ
憑依を何回もしないと進めない場所ではテンポ悪すぎる
ゲーム中、何回かジャンプアクションを要求される箇所があり、そこでは地面が謎の滑りをみせたり、よくわからないものにひっかかって奈落の底に落とされたりと、地獄要素を更に付与してくる。
落ちて死んだ場合、魂になる事も無く即リトライで長いゲームオーバー演出&ロード時間が入ってプレイヤーに責苦を与えてくる。
地獄。
ゲームオーバー画面
ご丁寧に悪魔から嫌味を言われる
ちなみに初期verでは三回ゲームオーバーで前のチェックポイントに戻される仕様があった
完全に嫌がらせ
Agony一番の難点が、マップのわかり辛さ。
マップデザインが本当に最悪で、開発者がプレイヤーを一体どっちに進ませたいのか、意図がまったく汲み取れない造り。
地獄は全体的にだだっ広い上に分かれ道が無数にあって必要以上にゴチャゴチャしてる。
その上どこも薄暗いというオマケつきだ!
そんな舞台を、一撃死させてくる悪魔からステルスしながら探索する試練が、ゲームの序盤から終盤までずっと続く。
一応「デスティニーライン」という行先を示すシステムがあり、使用することで光の筋が目的地を案内してはくれる。『デッドスペース』のロケーターみたいなシステムね。
だが、使用回数に制限がある上に、使ってもすぐ消えるので焼け石に水。
光を追おうと思っても、地形に引っかかって追い切れず、無駄撃ちになってしまったりもあって苦痛で叫びたくなる。
お釈迦様の蜘蛛の糸ばりの頼りなさだが、これに頼らないと行先が本当にわからないので使っていかざるを得ない。
泳いで移動する場面も登場するが、舞台が地獄だけに泳ぐのはすべて血で、潜った時に視界が真っ赤に染まる。
当然のように、ぜんぜん前が見えねえ。
しかも水中は上下にも進めてしまうせいで余計にマップが複雑になり、行先のわかり辛さに拍車がかかる。泳ぐスピードも当然遅い上に、あまり長い時間潜ってると容赦なく窒息して死ぬ。
道中では行く手を阻むパズルや仕掛けもあるんだけど、これまた何をすればいいのかわかりにくい。
ヒントの置き方や導線の誘導が実に下手で、難しいとか骨があるとかではなく、ただただ不親切。
パズルの種類自体は少なく、中でも道中頻繁に登場するのが正しい魔力印を描かせる扉の仕掛け。
近くにある魔力印から正しい印を記憶して扉に記入することで進めるのだが、正しい印のヒントがわかり辛すぎる。
結局総当たりに近い探索をした方が早いことが多い。辛い。
魔力印を使ったパズル
こればっか出てきて食傷気味
一度に記憶できる魔力印が一つだけなのも面倒
試してみて駄目だったらまた他の魔力印のとこに行かないと駄目
めんどい
ゲーム途中から新しいギミックが登場していくが、その説明もおざなりになっていく。
説明なしでいきなり新ギミックを使わせたりすることなんてザラ。
特にラスボス戦は何をすればいいのかろくに説明されず、制限時間が来てしまうと容赦なく死亡(チェックポイントに強制で戻される)。
死ぬ度に非常に長いムービー(スキップ不可)を見せられてストレスで脳が爆発しそうになる。
一応、ムービーで何をすればいいのかのヒントはあるものの、あれをヒントだと見抜ける人間はそうはいるまい。
ストーリー進行も問題があり、謎の赤い女神に言われるがままに、下される意図不明のお使いを淡々とこなしていくうちによくわからないままゲームが終わる。
ストーリーデモシーンだけでは何が起こっているのかの理解は不可能。
ゲーム中には文書がかなりの数が用意されており、それらを読み解いて考察して話を読み解くようになっている・・・・・・のだが、物語のベースが旧約聖書とシュメール神話で元々が非常に難解。
その上さらに輪をかけるように、不自然な日本語訳がストーリーの理解を妨げている。
あまり大きな声で言えた話ではないが、自分の場合元々の宗教的教養の無さも相まってまったくストーリー理解が追いつかなかった。
周回プレイしてストーリーを理解しようとしたものの、劣悪な操作性と酷いマップと3D酔いに悩まされて断念!
流れはわかってるからって、走ってストーリークリアしようとすると激しく酔うんだコレが!!!
総じてゲームとしてのデザインの悪さが目につき、遊ぶには多大な苦痛が延々とつきまとう。
何もない通路を歩くだけでもそれなりにストレスなゲームは珍しい。
元々VR対応を目指してたゲームなせいで動作一つ一つも非常に緩慢なのもあって、真綿で首を締めるような苦しさがゲーム中ずーっと続くっていうある意味稀有なタイトル。
なのに結局VR対応してないんですけどね!!
ただ、おそらくVR対応していたら、個人的にVR酔い最強ゲームの『ヒア・ゼイ・ライ』余裕で超えていたと思われるため、VR対応しなくて本当によかった。心から良かった。こんなんVRでプレイしたら誇張じゃなくて死ぬわ。本当に。
総括
地獄シミュとしては100点満点。
ただしゲームとしては拷問器具以外の何物でもない。
難解な物語、良いとは言えない翻訳、操作性の悪さ、劣悪なマップデザイン、3D酔い、それらすべてに耐えながらひたすら当てもなく地獄を彷徨う苦痛は、まさに地獄以外の何物でもない。
ただ、Agonyの名を冠してる以上、このゲームはその名に偽りが無い事も事実ではある。
もしかしたら、開発者が地獄とは何かをリアルに突き詰めた結果、プレイヤーの想像以上に地獄をゲーム上に顕現させてしまったのではないだろうか。
将来地獄に行く予定のある人が予習用にプレイするか、素行の悪い人間に地獄の恐ろしさを教えて情操教育を促すための道徳用ソフトとしては良いかもしれない。
ビジュアル面に関しては特徴的ではあるし、個性は尖ってる作品なのだが、いかんせんプレイ感が悪すぎて悪印象を覆すほどではない。
エログロ表現は人を選ぶというのもあって、最大のウリのビジュアル面でも拒否反応を示す人はいるだろう。
物語の理解には旧約聖書の知識が必要不可欠と思われ、ストーリーの理解も難事。
残念ながら自分には理解が及ばず、ストーリー面の評価はできない。
とりあえず、わかりづらいストーリーということだけはわかった!
誰か我こそは旧約聖書マニア!という方はストーリーの考察教えてくださいお願いします。
ストーリーを抜きにしても、プレイしていて五臓六腑に深々と染み渡る面白くなさで、2018年上半期にプレイしたホラーゲームでワースト。
自分が何やってるかもわからない、目的もわからない、マップのどこに向かえばいいかわからない、ゲーム全体での進行度がどのへんかわからない、ストーリーもわけわからない、のないない尽くしで気づいたら終わってた。
残ったのはストレスだけ。
自分で遊んでいると操作性と視認性の悪さが実に悩ましい。
人がやってるのを見るのが一番楽しいゲームだと思う。
価格は3,090円。
地獄の体験費用と思えばまあ納得できるか・・・・・・?
プレイ時間自体は一周10時間ほどで、探索要素も多く、クリア後にサキュバスを主人公にしたモードも解放されるため、ボリューム自体は値段相応分は十分ある。
ボリューム自体はね!何周もしようって気になるかは別問題ね!
ただし、プレイするにはそれなりのスペックのPCが必要で、Steamストアページの最低要求スペックを上回っていても相当重い事には注意が必要。
それなりにゲームができるPCスペックじゃないと満足に動かないかメモリ不足でクラッシュするかも。
特に中盤、何か所か非常に重いエリアがあるため、途中からクラッシュして進めないけど返品できない…という事にならないように気をつけよう。
もし買いたいという人がいるなら、地獄に足を踏み入れようとすることの意味を今一度よく考えてから、慎重にプレイしてもらいたい。
関連作品
ゲーム
・ハングリィゴースト(PS2)
・・・・・・地獄体験ゲーム。複雑な分岐要素と、斬新なゲームシステムが印象的。
ただし最悪すぎる操作性とゲームテンポが全ての足を引っ張る。
・ダンテズ・インフェルノ(PS3・PSP)
・・・・・・ダンテの神曲をモチーフにした、地獄が舞台のアクションADV。
地獄繋がり。