ゲーマー的映画のすすめ:13日の金曜日(初代)
ゲーマー的に関わりの深い映画を紹介してみようという趣旨の企画を始めてみました。
第一回はアメリカ三大ホラー映画の一つ、『13日の金曜日』の紹介記事です。
今日8月2日(木)にゲーム『Friday the 13th:The Game』がついに発売されした。
せっかく7月13日の金曜日に発売される予定だったものが、まさかの延期と言う残念すぎる事にはありましたが、まあそこはそれ、無事発売されただけでも良しとしましょう!
フライデー・ザ・サーティーンス:ザ・ゲーム 日本語版 (Friday the 13th:The Game) 【CEROレーティング「Z」】 - PS4
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- 発売日: 2018/08/02
- メディア: Video Game
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ところでホラー映画では屈指の知名度を誇る本作ですが、いったいどのくらいの人が原作の映画を観たことがあるのでしょうか。
「ジェイソンはホッケーマスクを被った殺人鬼」という情報はほとんどの方が知っていると思いますが、なんとなく知った気になって、作品までは観たことが無いという人も多いかと思います。
日本語版のゲーム発売記念ということで、映画『13日の金曜日』シリーズの紹介記事を書いていこうと思います。
普通にネタバレを含みますので気にする人は注意!
さすがに一作目がほぼ40年前の作品なので、今更ネタバレとか・・・・・・って感じではありますが。
全てはここから始まった
タイトル:13日の金曜日
原題 :The Friday the 13th
公開 :1980年 アメリカ
監督 :ショーン・S・カニンガム
脚本 :ヴィクター・ミラー
上映時間:95分
あらすじ
ニュージャージー州に存在するクリスタルレイクキャンプ場。1957年、一人の少年がクリスタルレイクで溺れ、命を落とした。
そして翌年の1958年、キャンプ指導員2名が何者かに殺害される事件が起こる。その後も不可解な事件が続発し、いつしかクリスタルレイクは“血のキャンプ場”と呼ばれるようになっていた。
時は過ぎ、1979年。閉鎖されていたクリスタルレイクを再開するために若い男女がキャンプ指導員として集められた。
しかし、何者かの手によって彼らは一人、また一人と次々に殺害されていってしまう。
長い惨劇の幕が上がってしまった事を、彼らはまだ知る由も無かった。
ジョン・カーペンター監督の映画『ハロウィン』の大ヒットを意識して作られた本作。
製作費わずか55万$にして興行収入3,975万$という驚異的なヒットを記録し、後にシリーズ化もされ、スラッシャー映画と言えば『13日の金曜日』と言えるほどの知名度を得るほどになりました。
3,975万$の興行収入は1980年公開の映画の中でも20位。
同年公開のスタンリー・キューブリック監督によるホラー映画『シャイニング』が興行収入4,400万$であることを考えると、いかに驚異的な数字かわかると思います。
更に言えば、製作費に対する利益率で語ればその年一番の大ヒットを飛ばした『スターウォーズ 帝国の逆襲』を遥かに凌ぐと言う凄まじさ。
80年代はスプラッター映画ブームが印象的ですが、本作がそのブームの火付け役の一端を担ったことは確かでしょう。
血に染まるキャンプ場
若者たちがキャンプ場に集い、気づかないうちに一人ずつ殺され、最後に生き残った人物が殺人鬼と対決する・・・・・・。
1作目にして後のシリーズに続く基本の物語フォーマットは既に完成しています。
「殺戮劇の舞台に向かう若者たちに警告を発する老人」というホラー映画でよく見るやつも登場。
お約束を見るとつい楽しくなってしまいますね。
またセックスしたカップルは死ぬ、というお約束も開幕から盛り込まれています。
即逝き2コマ劇場。
セックスしたら死ぬ、という法則はこの映画が初というわけではないのですが、このシリーズはその法則に理由付けがあるのが特徴。
その理由は後述しますが、おかげで自然にお色気シーンを挿入できて興行収入も伸びるわけですね!
とはいえ、1作目ではお色気シーンは控え目。
本作のヒロイン、アリス。
演じるのはエイドリアン・キングで、当時まだ駆け出しの女優。
低予算映画の本作は、主役に限らず出演する俳優がほぼ新人で固められています。
出演する俳優の一人に、なんと有名な俳優ケヴィン・ベーコンの姿が。
多作で知られる彼ですが、なんと『13日の金曜日』は映画出演4本目のごく初期の作品だそうで、人に歴史ありといった趣きがありますね。
しかしケヴィン・ベーコン若い!
シリーズで何度も登場するクリスタルレイクですが、毎回ロケ地が異なることで知られており、作品によって広さも水質も地形も何から何まで違うのが特徴。
ちょっとは統一しろよ!って思いますが、そこも味として嗜むのが映画ファン。
今回のクリスタルレイクはかなり綺麗な方ですね。
キャンプ指導員たちが楽しくキャンプ場を満喫してる間、だんだんと彼らは殺されていくわけですが、1作目の本作では殺人鬼が姿を現さないまま次々と殺されていきます。
一体殺人鬼は何者なのか?どんな人物なのか?という想像を抱かせる構成は1作目ならでは。
残念ながら今や古典映画になってしまっているため、我々がその楽しみを真に味わうことは出来ませんが、後のシリーズ作にはない味は今でもまだ残っています。
『13日の金曜日』シリーズ前期は殺人の発覚が遅いのも特徴的。
終盤まで登場人物は殺人鬼がいることさえ知らないまま殺されていく展開が多く、初めてシリーズを観た人は意外に思う人が多いと聞きます。
本作の登場人物たちも、仲間が殺されていることも知らずに呑気に遊びに興じているわけですが、何をやっているかと言うと
ストリップ・モノポリー。
おいおい、こっちのほうのゲーム化もはよ。
メーカーはニチブツかセタかジャレコあたりで。
あ、もう全部メーカーが無いわ!
13日の金曜日と言えば・・・・・・
13日の金曜日はスラッシャー映画。
スラッシャー映画の花形と来れば殺人鬼。
13日の金曜日の殺人鬼と来れば・・・・・・皆さんもうおわかりですね。
もちろんこのお方。
誰だお前!?
あ、はい。
ホラー映画を観ない人にはあまり知られていなかったりしますが、
映画1作目の殺人鬼はジェイソンではありません。
ウェス・クレイブン監督の映画『スクリーム』を観てる人には常識ですね!
今作の殺人鬼はパメラ・ボーヒーズ。(字幕ではボリーズ)
ジェイソンの実の母親です。
1957年、息子のジェイソンが湖で溺死したのがきっかけで気が狂い殺人鬼になりました。
キャンプ場が再開すると再び我が子のように事故死する子供がでるかもしれないという、彼女なりの善意が行動の根幹にあるのが性質が悪い。
セックスに夢中で監視を怠り、息子を死なせたキャンプ指導員を恨んでいるため、キャンプ指導員たちを殺害していきます。
この点は息子・ジェイソンも同様で、ジェイソンはセックスしている若者を見ると殺意1000%で襲ってくる性質があります。
後の作品になってくると、この性質は逆にギャグとして使われる場面もしばしば。
ところで作中で印象的に使われるBGMのフレーズ“ki...ki...ki...ma...ma...ma...”
ジェイソンの登場シーンの音として有名ですが、元々はパメラの頭の中に響く息子の言葉“Kill,mom”を意識して作曲されたものです。
パメラに宿る狂気を音楽で表現している秀逸なサウンドだと思います。
実は1作目は“息子を失って狂気に陥った母親のサイコホラー”という作風でして、スラッシャー映画ではあるのですが、むしろヒッチコックの映画「サイコ」を強く思わせるものになっています。
なので2作目以降とはかなり雰囲気から何からが異なっており、
そもそも1作目の時点ではジェイソンは1957年に死んだことになっています。
2作目以降のジェイソンは後付け設定で強引に生きてたことにされたものです。
実際、本作では幻覚以外でのジェイソンの登場シーンは一切ありません。
惜しくもジェイソンはベーコン数1を獲得し損ねてますね。
パメラを演じたベッツィ・パーマーも「あんなマスク被った男は私の息子じゃないわ」とかインタビューで言ってたりします。
パメラは見た目普通の女性で、戦闘能力も(ジェイソンに比べれば)いたって一般人レベルなため、ジェイソンのように圧倒的な力で追い詰められる存在感はありませんが、独り言をぶつぶつ言いながら迫ってくるアレな人特有の恐怖はこれはこれでなかなか良いものです。
ただし、そこはやはりジェイソンの母親。
ガラスぶち破る勢いで思いっきり死体を投げる怪力ぐらいはあります。
やっぱり化け物じみてるんだよなあ・・・・・・。
殺した死体を飾り付けて生存者を驚かせるお茶目な一面もしっかり息子に受け継がれています。(ジェイソンも良くやる)
ただいくらジェイソンの母でも、いかんせんヒロインのアリスの戦闘能力が高すぎてボコボコにされて返り討ちに遭ってしまうのが悲しい所ではあります。
映画ではアリスの反撃のあまりのテンポの良さに思わず笑ってしまうほどで、これは実際に是非映像で観て欲しい所。
基本にして王道、シリーズでは異端の存在
本作の見どころは、やはり完成されたホラーの様式美でしょうか。
ホラー映画のテンプレとも言うべき構成。
やはりホラーの王道映画ということで、今観ると古めかしいと感じる点も多いですが、ホラーのルーツを辿っている実感があり、映画好きなら間違いなく楽しめる一本。
ホラー映画ファンにはトム・サヴィーニによる特殊効果は外せません。
トム・サヴィーニといえばロメロ監督による伝説級の映画『ゾンビ』の特殊効果を担当したことで有名。
今の映画ファンの目から見るとさほど血糊の量が多いわけでもなく、ことさらショッキングな映像ではないかもしれませんが、公開当時水準で見ると非常に良く出来ています。
ジャケットにも載っているケヴィン・ベーコンの死亡シーンは特に良く出来ていますね。
飛び出す刃先に突き破られる皮膚の質感が実にリアル。
この場面の撮影秘話が面白いので、メイキング映像観るといいですよ。
ホラー映画的にはそんな王道の作品ですが、やはり『13日の金曜日』シリーズで見ると、初代なのに異色作という不思議な現象が起こっているのが面白い所。
ジェイソン出ないとかジェイソン出ないとか、オマケにジェイソンが出ないとかが主にその理由ですが、他にも人物の死亡シーンがカメラで映されない場面があるなど、後の作品では滅多に拝めない描写があります。
13日の金曜日は殺害シーンをどう描くかという風に作風がシフトしていくので、これは非常に珍しい。
あとはやはりヒロインと殺人鬼の力が拮抗してるので、ラストで取っ組み合いになる場面なんかは新鮮ですね。
Part6以降のジェイソンだとワンパンで首がもげる強さなので、取っ組み合いが成立する余地が無いです。
13日の金曜日に関してのあれこれ
記念すべき1作目のクリスタルレイクロケ地となったキャンプ場Camp No-Be-Bo-Scoは現在も存在します。普段は観光客に開かれてはいませんが、定期的にロケ地ツアーも行っているとのこと。
興味がある方はチェックしてみるといいかと。
本作では幻覚でジェイソンが登場するシーンがあるのですが、元々の脚本ではジェイソンは畸形ではありませんでした。
これは特殊メイクのトム・サヴィーニのアイデアで変更されたようで、もし脚本通りジェイソンの見た目が普通であれば、後のシリーズでのジェイソンの印象も変わった物になっていたかもしれません。
もしかしたらホッケーマスクを被ってなかったかも・・・・・・。
パメラ役のベッツィ・パーマーがこの作品に参加した理由が「車が故障して新しい車代が必要だったから」で、更に届いた台本を読んだ感想が「なんてクソ脚本!こんな映画誰も観るわけない!」だったそうな。
監督は監督の方で、『13日の金曜日』の製作姿勢は“利益だけを目的とした作品”だったらしく、元々撮りたかったファミリー向けのサッカー映画の繋ぎだったそうで。
そんな作品が大ヒット飛ばすんだから、世の中わからなくて面白いなあ、なんて思いますね。
というわけで、『13日の金曜日』の紹介でした。
サイコホラー風味で他のシリーズ作とは少し毛色が違う1作目。
ゲーム『Friday the 13th』には若干関わりの薄い本作ではありますが(ジェイソン出ない的な意味で)、せっかくだから観てみると面白い発見があるかもしれないですよ。
次回の『13日の金曜日Part2』の記事はこちら。
関連作品
・映画
サイコ(1960年)
・・・・・・ヒッチコックの言わずと知れた映画。
観たこと無くてもシャワーシーンは知ってるって人は多いはず。
ハロウィン
・・・・・・13金が直接影響を受けた映画。
ジェイソンがマスクを被るのもマイケル・マイヤーズの影響だそうで。
・ゲーム
The Friday the 13th(NES)
・・・・・・AVGNの動画で有名な作品。ジェイソンの色が独特。
The Friday the 13th:The Game
・・・・・・非対称型マルチ対戦ホラー。ジェイソンがいじめられるゲーム。
Dead by Daylight
・・・・・・登場するキラー、トラッパーがジェイソンモチーフ。
おそらく、2009年のリメイク版ジェイソンが直接のモデル。